借金などとは無縁だと思って生きていましたが、人生何が起こるか分からないものですね。妻子持ちの男性と恋愛関係になり、それが男性の奥さんにばれ、奥さんから慰謝料を請求されてしまいました。その額はなんと五百万円です。

不貞行為の慰謝料としては多すぎる額でしたが、わたしにはどうしても支払わなければならない理由がありました。

借金の総額が一億以上もしくは以下の場合には

憧れの企業に就職

わたしの人生で一番の快挙と言えば、今の会社に就職できた事です。三流大学の学生だったわたしが、冷やかしのつもりで受けた大手保険会社に合格したのです。全国的に名の知られた企業です。自分でも信じられませんでしたし、両親の喜びようと言ったらすごかったです。

親戚中に自慢していました。しかし、その喜びも束の間、入社してからが苦労の連続でした。男性社員は有名大学を卒業した人ばかりでさすがに優秀です。女性社員もやはり頭の良い、仕事の出来る人ばかりでした。そんな中で、平凡なわたしが仕事をこなして行く事は、ものすごく大変でした。

毎日怒られてばかりで、緊張の連続でしたし、こんな事ならいっそ採用されなければ良かったとまで思いつめる事もありました。それでも何とか頑張れたのは、大学時代の友達からの憧れの眼差しや、お給料面での待遇の良さでした。

わたしはお洒落が大好きで、ファッションにも化粧品にもお金をかけていました。その為に働いていると言っても過言ではありません。今の会社のお給料でなければ、絶対に買えないようなアイテムを手にした時「何があっても会社は絶対辞められない」と強く思うのです。

先輩との不倫

どうにか社会人3年目を迎えられ、気持ちにゆるみが出た時でした。仕事で大きなミスをしてしまったのです。上司からは厳しく叱責され、同僚からは冷ややかな目で見られました。毎日女子トイレで目が真っ赤になるほど泣いていたわたしを見かねたのか、仕事帰りに食事でもどう?と誘ってくれたのは、10歳年上のKさんという先輩社員でした。

Kさんは背が高く物腰もスマートで、顔立ちの整った男性でした。女性社員からも人気があり、上司の受けも良いエリートサラリーマンです。わたしにとっては、雲の上の存在で、今までろくに話したことすらありません。そんなKさんからいきなり誘われて、正直面食らいましたが、Kさんは優しいので落ち込んでいる人を見ると放って置けないのだろうと思い、有難く誘いを受けました。

わたし自身、たまりにたまったストレスを、誰かに話を聞いてもらうことで発散したい、という気持ちが強かったのかも知れません。Kさんに連れて行ってもらったのは、洒落たイタリアンレストランでした。隠れ家のような雰囲気で、いかにも仕事のできるKさんが選びそうなお店でした。

店内はカップルばかりで、何だか気後れしましたが、とても美味しいワインを頂くうちに、わたしの気持ちも徐々にほぐれてきました。Kさんは、わたしの話を静かに聞いてくれました。相槌を打ったり、目だけで頷いたりしながら、一切余計な口は挟みませんでした。

こんなに聞き上手な人に、未だかつて会った事のなかったわたしは、食事が終わる頃にはすっかりKさんに気を許していました。そしてKさんに誘われるまま、ホテルのバーに場所を変えたのです。お酒にあまり強くないわたしは、すでに相当酔っていましたが、Kさんともっと話したいという気持ちが強くて、バーでもカクテルを飲みながらKさんと話し込んでいました。

わたしの話が一段落するのを見計らったように、Kさんは意外な話を始めたのです。Kさんには、7年前に結婚した奥さんと、5歳の娘さんがいましたが、奥さんがすごく気の強い人で家庭では安らげないと言うのです。

Kさんとしては、本当は奥さんと離婚したいけれど、娘さんと離れるのが辛くて、我慢して結婚生活を続けていると言うのです。パーフェクトな人生を送っているように見えたKさんに、そんな悩みがあるとは思いもしませんでした。

わたしは、すっかり同情してしまい、涙ぐみながらKさんを慰めました。Kさんは「ありがとう」と言って、にっこり笑いました。その笑顔には、思わず惹き込まれるような魅力があり、わたしは視線を外すことが出来ませんでした。

それから後のことは、ぼんやりとしか覚えていません。とにかく、夢の中にいるようなふわふわとした心地で、気が付くとKさんと一緒に朝を迎えていたのでした。

奥さんからの慰謝料請求

Kさんと不倫関係に陥ってしまったわたしには、自分でも不思議な位、罪悪感というものが湧いてきませんでした。こんなに素敵なKさんを悩ませている奥さんに敵意すら感じていました。Kさんは、週に一度はわたしの自宅マンションに来て、一緒に楽しい時を過ごしました。

君といると癒やされるんだ、と言うKさんをとても愛おしく感じて、わたしは一生日陰の身のままKさんを支えて行く覚悟すらしていました。今思えば、完全に不倫の泥沼にはまり込んでいたのですが、当時のわたしはそんな事に気付きもしませんでした。

Kさんとの恋愛に夢中になり、自己陶酔していたのです。しかし、ある日Kさんからかかってきた一本の電話で、あっけない程全てが終わってしまいました。奥さんに不倫の事がばれてしまったから、わたしとはもう会えないと言うのです。

わたしの事は奥さんには絶対に黙っているから、このまま別れてくれと言われ、一方的に電話を切られてしまいました。Kさんにとって、わたしは単なる遊び相手に過ぎなかったのだ、という事実に打ちのめされてしまったわたしは、これから起こる恐ろしい出来事など予想もしていませんでした。

Kさんと別れ、何事もなかったかのように、会社でただの先輩、後輩として振る舞うことにやっと慣れてきた頃に、自宅宛に内容証明郵便が届きました。差出人の名を見て、わたしの顔からは血の気が引きました。それはKさんの奥さんと思われる女性からのものだったのです。

慌てて開封すると、そこに書かれていたのは、わたしを地獄の底に突き落とすような内容でした。Kさんとわたしの不倫の証拠は、探偵事務所を使ってすべて押えてあることや、わたしの素性も実家の住所も調べがついていることなどが淡々と書かれ、手紙の最後は五百万円の慰謝料を請求すると締めくくられていたのです。

消費者金融からの借金

完全にパニックに陥ったわたしは、まずKさんに電話を掛けました。しかし、彼は彼で奥さんから離婚の請求と慰謝料の請求をされ、わたしの事どころではなかったようです。誰にも相談できなかったわたしは、慰謝料の事について書かれた本などを読み漁りましたが、どの本にも不倫の慰謝料の相場は五十万円から三百万万円だと書かれていました。

五百万円というのは法外な値段だという事は分かりましたが、実家の住所が手紙に書かれていたという事は、奥さんからのメッセージのように思えたのです。

つまり、五百万円支払わなければ、わたしの両親にも不倫のことをばらすぞ、という事です。

わたしは、両親にだけは知られたくありませんでした。奥さんもそういうわたしの心理状態を重々承知だったのだと思います。奥さんの方が一枚も二枚も上手でした。わたしには、五百万円の慰謝料を支払わないという選択肢はなかったのです。

わたしには貯金が百万円程しかありませんでした。そのため、残りの四百万円は消費者金融で借りることにしました。

慰謝料を支払った後に残ったのは、借金と恐怖感

毎月の返済額は八万円程になりました。もう、お洒落だ何だと言っている余裕はありません。生活費も切り詰める生活が始まりました。しかし、慰謝料を支払えば何の心配もなくなると思っていたわたしでしたが、実際はそんな単純なものではありませんでした。

いつ奥さんの気が変わって、両親や会社にばらされるか分からないのです。わたしは、一生奥さんに自分の運命を握られたまま生きていかなければいけない恐怖感にとりつかれて、夜も眠れなくなりました。Kさんが不倫をしたのは、奥さんにも原因があると、いくら声高に叫んだところで、誰もそんな事に同意はしてくれませんし、世間は不倫を許しません。

今更ながらに、自分の浅はかさを後悔しています。